ブドウの樹齢のこと
ブドウの樹齢はワインに影響を及ぼすのでしょうか…
『Vieille Vignes(ヴィエイユ・ヴィーニュ)』という言葉、ご存知ですか?
フランス語で、樹齢の高いブドウの木を意味します。『V.V.』と略されることもあります。英語では、Old Vine(オールド・ヴァイン)です。
何年だと樹齢が高いと言えるのかは意見が分かれるところですが、ヴィエイユ・ヴィーニュの表記は、だいたい30~40年以上というのが一般的です。
ところでブドウは120年くらい生きると言われていますから、樹齢30年ではまだ若いような気もします。
さて、樹齢が高いということは、ワインにとってどういうことなんでしょう?
若木のブドウは、吸収した栄養分・水分を自身の成長のために使います。植えられた場所で安定して生きるために、根を伸ばし、つるを伸ばし、葉を茂らせなければなりません。
そして若木は多くの実をつけます。樹齢20年くらいまでは栄養を成長に回し、樹勢は強くなります。
それを過ぎると成長は落ち着き、根から吸収した栄養分をブドウの実に回すようになります。
20年かけて地下深く伸びた根はさまざまな地層の栄養素を吸い上げますので、栄養バランスも良くなります。
また若い頃より結実数は減っていきます。少ない実に太陽の恵みと栄養が届くわけですから、その実は凝縮し、ワインになった時に質の高いワインとなるわけです。
ただ、誤解のないようにしたいのが、樹齢が低いからといって美味しくないわけではなく、樹齢が高いからといって必ずしも美味しいわけではありません。
樹齢はあくまでもワインの味わいに影響を与えるたくさんの要素の一つに過ぎません。また樹齢が低くても、密植することによってブドウの木を競争させれば、限られた栄養分や水分を求めブドウの根はより深く伸びようとしますし、さらに剪定により結実数を少なくコントロールすることにより、ブドウの実の味を凝縮させることができます。
ワインを造るなら樹齢が高ければ高いほど良いのかといえば、そういうわけでもありません。
実の数が減っていきますので、ワインの生産量が落ちてしまいます。
また樹齢が高くなると病気にかかりやすくなり、多くのケアが必要になります。手間やコストがかかり、生産性も下がります。ですから生産者たちは定期的に植え替えをしているのです。
一般的にはブドウの寿命は120年なのですが、北イタリアのアルト・アディジェには、推定樹齢約350年ながら現役で実をつける白ブドウ「Versoaln」もあり、そのブドウから今もワインが造られているというから驚きです。
さらにスロヴェニアのマリボルという街には、樹齢400年以上でギネスにも認定されている世界最古といわれるブドウの木があり、こちらでもワインが造られているそうです。
また日本では、山梨県甲州市の大和葡萄酒さんが樹齢約130年といわれる甲州種「甲龍」を大切に管理し、ワインを生産しています。
オーストラリアの樹齢150年のシラーズから造られる「ヒル・オブ・グレース」はあまりにも有名です。
その他にも世界では、高樹齢のブドウから希少価値の高いワインが生産されています。
私自身、これほど樹齢の高いブドウの木はさすがに写真でしかみたことがないのですが、私が南イタリアのシチリア州エトナ山で出会った樹齢80年を超えるブドウ畑は、とても神秘的で、仙人が住んでいそうな不思議な空気感があり、印象的でした。現在はプラネタ社が管理しています。
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北イタリアのトレンティーノの生産者、フォラドリの赤ワイン「グラナート」の畑では、やはり樹齢80年を超えるテロルデゴが圧巻の存在感を放っていました。
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このような樹齢の高いブドウのワインは長寿のお祝いに最適です。
生まれ年のワインを探すのは大変ですし、価格も高く、ワインの扱いにも気を使いますが、樹齢の高いブドウから造られたワインを見つけるのはインターネットを使えば簡単にできます。