海に沈んでいたシャンパーニュ

ワインの熟成は神秘的。
私たちが通常目にするのは、せいぜい20~50年程度の熟成を経たものがいいところ。
でも、190年以上の熟成を経た飲用可能なシャンパーニュがあるというから驚きです。

そのシャンパーニュは「ペリエ・ジュエ1825年」、エペルネのペリエ・ジュエの地下セラー「エデン」に今も大切に保管されているそう。

そして、次に古いシャンパーニュといえば…

2010年、フィンランド領オーランド諸島付近、バルト海の海底に沈む沈没船から168本のシャンパーニュが見つかったということで、当時大きな話題となりました。
そのコルクの刻印やミュズレから、その半分以上が「ジュグラー」という今はなきシャンパンメーカーのもの、他は「ヴーヴ・クリコ」や「エドシック」ということが判り、1830~40年前後のものと推定されました。

このシャンパーニュ、どんな香りや味なのか、気になりますね。

このワインをテイスティングした専門家たちのコメントでは、
外観はやや濁った黄金色~琥珀色、気泡はほぼ感じられず、グラスに注がれた瞬間は、チーズや動物のようなインパクトのある香りが漂ったが、空気を含ませると一転、ハチミツ、トースト、キノコなどの複雑な香りへぐんぐん変化していった。味わいは現在のシャンパーニュに比べるとかなり甘め。現在一般的なブリュットの規定は、1リットルに対し残糖15グラム以下ですが、当時のものは約150グラム。なんと10倍以上の糖分を含んでいます。ただ酸が豊富にあり、思ったよりベタつかず飲みやすく、良い状態を保っていたとのこと。また、高い濃度の鉄と銅も検出されており、これはブドウの樹をカビなどの病気から守るために使われた硫酸銅や、樽を作る際に使われた釘に由来するものとみられています。


ワインが眠っていた環境は海底約50メートル、水温は約5℃で真っ暗、水圧もシャンパーニュのガス圧と釣り合いがとれ、熟成には絶好の条件が整っていました。

その後、沈没船から発見されたシャンパーニュの一部はオークションにかけられ、2011年、ヴーヴ・クリコのものが1本3万ユーロ(約390万円)で落札されたそうです。
この熟成プロセスの研究のため、ヴーヴ・クリコは2014年、オーランド諸島沖水深40メートルの海底に「オーランド・ヴォールト」と名付けた海底貯蔵庫を設置、350本のシャンパーニュを沈めました。
2014~2054年までの40年間海底で熟成させ、2、3年ごとにその一部を引き揚げてテイスティングし、熟成の進化を確かめる「セラー・イン・ザ・シー」プロジェクトを始めました。
3年後の2017年のテイスティングでは、海底熟成させたものと地上熟成させたもの、同じアイテムのものが比較試飲され、わずかながら熟成状態の変化が認められたそうです。

40年後の2054年、果たしてどのような研究結果がでるのか…首を長くして待ちたいと思います。

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