フランチャコルタ

「フランチャコルタ」というスプマンテ(スパークリングワイン)がグングン知名度を上げてきているように思います

2015年のミラノ万博ではオフィシャル・スパークリングワインとして振る舞われ、オペラの殿堂ミラノ・スカラ座でもオフィシャル・ワインとしてフランチャコルタが提供されています。また、イタリアを代表するファッション&ラグジュアリー・ブランドのイベントやパーティーでも、今やフランチャコルタは宴を盛り上げるのに欠かせない存在となっています。


実はイタリアにはフランチャコルタ以外にも注目すべきスプマンテの銘柄がいくつかあるのですが、今回は最もポピュラーなフランチャコルタにスポットを当てて、ご紹介したいと思います。

フランチャコルタは北イタリア・ロンバルディア州ブレーシャ県、イゼオ湖の南に広がる緩やかな丘陵地帯で栽培される、シャルドネ、ピノ・ネーロを主要品種とし、50%以下のピノ・ビアンコ、10%以下のエルバマットの使用が認められている瓶内二次発酵(メトド・クラッシコ)方式で造られるスプマンテです。18ヶ月以上の瓶内熟成が義務付けられており、これはフランスのシャンパーニュ(15ヶ月以上)よりも厳しい規定となります。また、1ヘクタールあたりの収穫量や搾汁率などをとってみてもシャンパーニュより厳しい基準となっています。収穫後少なくとも25ヶ月経たないと市場に出荷できません。ガス圧は5~6気圧です。

最初のフランチャコルタが誕生したのは1961年。今から約60年前のこと、それほど昔ではありません。「グイド・ベルルッキ」により生み出されました。来年がちょうど還暦、60周年に当たるのですね。1967年にD.O.C.に認定され、1995年には瓶内二次発酵スプマンテで初のD.O.C.G.に認定されています。

フランチャコルタの丘陵地帯は水はけの良い氷堆石土壌で、気候はイゼオ湖の恩恵を受け、温暖で穏やか。イゼオ湖の北にあるプレ・アルプスのカモニカ渓谷からの涼しい風が独自の微気候を形成しており、日当たりがよく昼夜の寒暖差もあるため、酸とアロマを保ちながら果実が良い状態で熟していきます。このようなテロワールが、誰もに好かれる親しみやすい果実味と心地よい酸、ミネラル感を持った高品質スプマンテを生み出すのです。

フランチャコルタの各ワイナリーは、バラエティーに富んだフランチャコルタを生産しています。先に述べた通常のフランチャコルタに加え、サテンロゼミレジマートリゼルヴァなどです。

サテンは白ブドウのみを用い、ガス圧は5気圧以下(大体4~4.5気圧程度)。丁寧なブドウの選別と低めのガス圧により、繊細で柔らかな味わいを生み出します。サテン以外はさまざまなドザージュのタイプがありますが、サテンは基本的にブリュット(辛口)です。

ロゼはピノ・ネーロを最低25%以上使用することが決められています。それぞれの白ブドウを決められたパーセンテージまで使用しても良いことになっていますが、ピノ・ネーロ100%で造られるものも多いです。ほんのりと赤系果実の風味、黒ブドウ由来のボディ、骨格があるフランチャコルタとなります。

ミレジマートは収穫年入りのフランチャコルタです。瓶内熟成期間が30ヶ月以上と非常に長く、収穫から37ヶ月経たないと出荷することはできません。その収穫年の特徴を鮮明に表す、個性的で上級のフランチャコルタです。

また、リゼルヴァは特に秀逸なミレジマートから造られ、瓶内熟成期間は少なくとも5年必要で、収穫から67ヶ月(5年半)経ってようやく出荷できます。長い熟成により複雑で奥行きのある香りと味わいを持った特別なフランチャコルタです。

フランチャコルタの糖度表示(甘辛度)はEUの規定に基づいて表記され、最も一般的なのがBrut(ブリュット)という辛口タイプ。フランチャコルタはもともと気候が温暖で果実が良く熟すため、ドザージュ(糖分の添加)は必要最低限しかされない傾向にあります。最近はドザージュを一切しない(パ・ドセ/ブリュット・ナチュール)タイプも増えてきています。


少し前のことになりますが、2016年の9月末にフランチャコルタを訪れました。いくつかのワイナリーを訪問させていただき、その中で印象に残った『Fratelli Berlucchi ~フラテッリ・ベルルッキ~』をご紹介します。補足ですが、最初のフランチャコルタとして先に触れた「グイド・ベルルッキ」とは遠い親戚にあたるそうですが、今は全く別のワイナリーとして稼働しています。

(写真 フラテッリ・ベルルッキ・ワイナリー)

フラテッリとは、イタリア語でフラテッロ(兄弟)の複数形。フラテッリ・ベルルッキは5人の兄弟たちによって始まりました。約70ヘクタールの畑を所有し、すべて自社で管理をしています。このワイナリーの面白いところは、建物の壁に1500年代の素朴なフレスコ画が今なお残っているところ。フレスコ画のすぐそばででワインの発酵が行われているのです。

(写真 発酵タンクの隣にはフレスコ画)

ワイナリー内を進んでいくと、多くのミレジマートが熟成されていました。ここには約6年分のミレジマートが眠っているとのこと。ミレジマートは収穫から37ヶ月経たないと出荷できませんが、フラテッリ・ベルルッキのミレジマートはそれより遥かに長く熟成されるのです。

(写真 熟成中のフランチャコルタ)

自動で動瓶(ルミアージュ)をする機械、ジロパレットがありました。シャンパーニュでも今はほとんどこの機械を使っているそうで、フラテッリ・ベルルッキでは、リゼルヴァに関しては今でも伝統的な手作業による動瓶をしていますが、それ以外はこの機械を使っているとのこと。手作業による動瓶を再現でき、品質的にも手作業との差はないとされています。この機械を使うと4日程度で全行程が終わってしまうそうで、かなり効率的です。

(写真 自動で動瓶をする機械)

その後もオートマティックに作業は進んでいきます。これはネックフリーザー。この穴に瓶を逆さまに入れ、瓶口を凍らせます。

(写真 ネックフリージング)

澱抜き(デゴルジュマン)が行われ、リクール・デクスペディシオン(ドザージュ)を注ぎ足しコルクを打栓、中の圧力でワインが飛び出さないように針金で固定します。最後にキャップシールをし、ラベルなどが貼られて完成です。

(写真 キャップシール被せる)

(写真 完成)

一通りテイスティングをさせていただいた後、ブドウ畑に立ち寄りました。収穫を終えた畑は黄金色に色づき初めていました。このあたりの畑は、根元には雑草を生やし、生態系を大切にした有機栽培が行われています。

(写真 収穫後のブドウ畑)

(写真 収穫を終えたブドウの樹)

最後の目的地はフランチャコルタのテロワールを特徴づけるイゼオ湖。白鳥がのんびりと遊ぶ静かな湖でした。夕方になり涼しい風が心地よく感じました。

(写真 イゼオ湖の白鳥)

(写真 イゼオ湖の夕暮れ)

フランチャコルタは、エノテカ・アリーチェ オンラインで購入できます。

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