イタリアワインは難しい?

私はイタリアンレストランでソムリエをしています。扱っているワインは全てイタリアワインです。

みなさんはイタリアワインについて、どのようなイメージをお持ちですか?

お客様からよく言われるのは「イタリアワインは難しいよ。だって品種がたくさんあって覚えられないから。」ということ。

確かにイタリアには2,000種以上(推定)の品種があると言われていますし、日本に輸入されているワインでも、ブレンドされている品種を細かく見ていくと、初めて聞くようなものも多々あります。
品種を細かく覚えていこうとすると・・・確かに難しくなってしまいますね。

イタリアワインを扱うソムリエとして、そしてイタリアワインファンの一人として申し上げたいのは、もっとシンプルに捉えてください、難しく考えず、まずは受け入れてください、ということです。

品種から入ろうとするから難しくなってしまうのかもしれません。

最初から、「覚えよう」と意気込んで取り組んでも、途中で嫌になってしまうこともあるかもしれません。

国際品種として知られる、シャルドネ、ピノ・ノワール、カベルネ・ソーヴィニヨンなどはフランスを中心に世界各国で栽培されています。

世界のワインの基本がフランスにあり、フランスワインとその品種をマスターすれば、世界のワインに応用することができ、ワイン全体の理解が容易になるという考え方が主流です。残念ながらイタリアは、全くそのルールに当てはまらないのです。

イタリアは全20州でワインが造られており、それぞれの土地、それぞれの地元に固有品種(土着品種)があります。その土地に元々あったと言われる品種も多いですが、他国から伝来したもの、特に紀元前7~8世紀頃、ギリシャ人がイタリアに到来した際に持ち込まれた品種も多いと言われています。

古代ギリシャ人たちはイタリアの南端、シチリアやカラブリアの海岸にやってきて、その土地がワイン造りに最適な土地であることから、「エノトリアテルス(ワインの大地)」と名付け、ブドウ栽培を広めていきました。ギリシャ人たちによりもたらされたそれらの品種はゆっくりとイタリア半島の北へ移動し、それぞれの土地でその土地に合うブドウ品種が残ってきたとみられています。

イタリアは紀元前後に古代ローマ帝国が栄え、ローマ帝国の拡大とともにブドウ栽培(ワイン造り)が広まっていきました。ローマ帝国滅亡後はいくつもの独立した都市国家が栄えたりして、一つの国として統一されたのは、なんと1861年。今から僅か157年前、長い歴史から見たら最近のことです。イタリア半島の中央にはアペニン山脈が縦断し、北にはアルプス山脈がそびえ、周りは地中海に囲まれ、相互の行き来が難しかったことから、それぞれの土地でそれぞれの文化が生まれ育ってきました。

ワインも然りー。

だからイタリア各地のバラエティ豊かなブドウ品種が守られ、育ってきたのです。

イタリアワインを識るために、まずはイタリア地図から始めてみてはいかがでしょう?

全20州の位置関係、そしてアルプス山脈とアペニン山脈、ティレニア海とアドリア海とイオニア海を押さえてください。

そして主要ブドウ品種だけ覚えましょう。

ワインを一本選んでみます。

例えばキァンティ・クラッシコ。
イタリア中部アペニン山脈の西側トスカーナ州のフィレンツェ~シエナ間の丘陵地帯で生産されるイタリアで最も知名度の高い歴史ある赤ワインです。
サンジョヴェーゼという黒ブドウ主体で造られ、スミレの花の香りが美しく、サンジョヴェーゼ特有の酸とタンニンの骨格がしっかりとした、瑞々しくエレガントな赤ワインです。
サンジョヴェーゼは亜種も非常に多く、同じトスカーナ内でも、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノやヴィーノ・ノビレ・ディ・モンテプルチャーノなど、有名な銘柄がいくつかあります。
気になったらぜひ飲んでみてください。そして地図で場所をチェックしてください。
その北のエミリア・ロマーニャ州、東側のウンブリア州でもサンジョヴェーゼの秀逸なワインがあります。見つけたら飲んでみてください。そして地図で場所を探してみましょう。
同じサンジョヴェーゼでもいくつかの共通点がありながら、その雰囲気の違いに驚かれるかもしれません。 そうするとなぜそんな違いがあるのか、興味が湧いてくるはずです。気候や土壌、栽培方法、醸造方法、調べてみて、ああなるほどというポイントを見つけることができたら、それを大切にしてください。
継続していくと、そのポイントが線となり繋がっていきます。
そうすると今まで無秩序と思えていたイタリアワインがすーっと秩序だって立体的に浮き上がってきます。


そしてイタリアワインをもっと気軽に楽しみたいという方へ。

何も覚えなくて大丈夫です。

イタリアは太陽の国、穏やかな地中海に囲まれた温暖な土地ですから、果実味のしっかりとした親しみやすい味わいのワインが多いです。いわゆるハズレワインは少ないはずです。そして価格も手頃なものが多いです。ワイン選びに困ったらまずはイタリアワインを選んでみてください。インターネットで購入する際は、味わいのコメントがあるはずですから、それを参考にされてもいいかもしれません。お店で購入する際も、ぜひスタッフに気軽に尋ねてください。

イタリアワインがもっとみなさんの身近なものになるといいなと思います。

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